第12回(2013年)審査員の講評(委員長以下、五十音順/敬称略)

ゲーム性をうまく組み込んだ作品が印象的。

恩藏 直人
モバイル広告大賞 選考委員会委員長
早稲田大学 商学学術院 教授

マーケティングの世界ではゲーミフィケーションが注目されている。ゲームの特徴である、ポイント獲得、競争、グレードアップなどの視点をビジネスにも取り入れるというものだ。
今回の作品を見ていて、ゲーム性をうまく組み込んだ作品が印象的だった。そもそもモバイルは、ゲームとの親和性が高いので、モバイル・マーケティングの世界では、ゲーム性を備えたキャンペーンや企画がうまく設計しやすいのだろう。
受賞作品にはアイデアを絞った力作がそろっており、多くの企業にとって参考になるはずである。

アイデアとクリエーティブのバランスがよい作品が多かった。

秋山具義
デイリーフレッシュ株式会社
アートディレクター

今年からフィーチャーフォンの受賞作品がなくなって、スマートフォンだけになったのが象徴的でした。
昨年までと比べて、びっくりするほど新しいものはなかったのですが、アイデアとクリエーティブのバランスはとてもいいものが多かったと思います。特にドミノ・ピザ ジャパンの初音ミクのキャンペーンはモバイルで完結したワクワクするような楽しい仕上がりでした。日産のキャンペーンはイベントなどともつながり、立体的で様々な世代が参加できる仕組みになっていて画期的だと思います。
スマートフォンのモバイル広告はこれから益々進化していくであろうということを今回の審査会で実感しました。

クリエーティブとマーケティングの融合が高度に進行。

伊藤直樹
PARTY クリエイティブディレクター
京都造形芸術大学 情報デザイン学科 教授

今年は、一昨年、昨年と比べ、より作品のレベルがあがった印象です。
技術をアイデアでうまく料理していて、効果が出ているものも多く総合力が上がっています。
そして、クリエーティブとマーケティングの融合が高度に進行しています。
個人的には、コカ・コーラとドミノの初音ミクアプリを推したい。
コカ・コーラは商品を買って、シリアルナンバーを入力して、コーラを飲みながらモバイルで各年代の音楽を聴いて楽しむという「体験のデザイン」として卓越している。効果も高く、クレバーなアプローチとして評価したい。
ドミノの初音ミクアプリは、若いデジタルギーク世代が夜な夜なピザを食べながらこのアプリを楽しんでいる光景が目に浮かぶ。パッケージやバイクにまで印刷したドミノさんの英断は尊敬に値します。おめでとうございます。

日本のモバイル広告のステージが一段階進んだ。

小野 譲司
青山学院大学 経営学部 教授

グランプリはじめ、各賞を受賞された関係者の皆様、おめでとうございます。
例年以上にレベルが高い作品が多い中、広告やマーケティングの本来的な課題が、モバイル技術を駆使して本格的に解決されるステージに入ったというのが、今年の印象です。広告、O2O、キャンペーンといったマーケティング課題へのハイレベルかつ本格的なソリューションが例年以上に目立ちました。
ここ数年を振り返ると、広告の枠を超えたモバイル広告という取り組みが、目立っていた印象がありました。しかしながら、本年度は、逆に、たんなる原点回帰でないこれまで以上に高いレベルで技術が融合され、しかも成果を意識した中で解決されようとしていることが印象的でした。この動きが、モバイルに対する企業のマーケティング投資がますます本格化したことの現れであるならば、日本のモバイル広告のステージが一段階進んだと思います。
今後に向けての課題も当然みられました。何らかのマーケティング目標に対する成果を可視化することが必要だと思います。マーケティング活動全体の中で、誰に対して、いつ、どのような場面で、どのように、そしてなぜ特定の成果をあげるのか、モバイル広告が、マーケティングプランニングの中核的役割になればなるほど、今後、より明確にしていくべきポイントだと思います。

リアルなイベントからバーチャルな表現まで、デジタルで巧みに異なるものをつなげられているものが目立ってきた。

杉山 知之
デジタルハリウッド大学 学長 / 工学博士

フィーチャーフォンから始まったモバイル広告が、まったく様変わりしてしまったことをはっきりと感じる審査だった。スマートフォンが主役になったというだけの世界では無く、スマートフォンも今やいくつものメディアやイベントをつないでいく、キーのひとつのような役目になっていた。
クリエーティブ部門では、目に訴えてくる表面をデザインしているものより、アナログ部分も含めて全体のユーザーエクスペリエンスをデザインしているものに、よりクリエーティビティを感じた。
マーケティング部門では、リアルなイベントからバーチャルな表現まで、背後に日本らしい仕組みや最新技術を盛り込んで、デジタルで巧みに異なるものをつなげられているものが目立ってきた。このあたりがモバイル広告の当面の本丸であることは明らかだった。  モバイル広告大賞ではあるが、もはや「広告大賞」と名乗っても同じなのではないかという感想を持った。

世の中の人に本当に楽しんでもらおうという気持ちが、真の成果を生むのだと思う。

田中 里沙
株式会社宣伝会議 取締役編集室長

「ブーン」という声で車を走らせたり、0.1秒のタイムセールにチャレンジしたり、みんなでイベントを盛り上げたりと、楽しい経験を提供する企画が多くて刺激的だった。これこそ「参加型」であり、企業がファンを増やそうという姿勢ではなく、世の中の人に本当に楽しんでもらおうという気持ちが、真の成果を生むのだと思う。音声クリックアドやアフレコCM、継続性のあるO2Oは、広告コミュニケーションの可能性をさらに広げることになると期待している。

モバイルというカテゴリー枠を超えて、日本のインターネットマーケティングレベルが一段上がったのではないか。

夏野 剛
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
特別招聘教授

ネット、スマートフォンアプリ、ソーシャルの使い方が大分こなれてきた印象を受ける。技術的に新しいというだけの試みはなりを潜め、具体的な効果を強く意識しながらもクリエーティブやUIを工夫した興味深い作品が多かった。
モバイルというカテゴリー枠を超えて、日本のインターネットマーケティングレベルが一段上がったのではないか、と思えるほどレベルの高いものが多かった。
日本のモバイル広告は間違いなく世界の最先端レベルにあることを再認識するとともに、その中で受賞された作品には最大の敬意を表したい。 今後さらに、消費者を楽しませながらマーケティング効果のある作品が出てくることを大いに期待したいと思う。

今や日常的なインターネットへの入口はPCではなくモバイルデバイスとなっている。

宮崎 光弘
株式会社アクシス 取締役
多摩美術大学 情報デザイン学科 教授

モバイル広告大賞も今年で12回目を迎えた。今回初めてフィーチャーフォンによる受賞作品がなくなり、すべてがスマートフォンの作品となった。また、多くの作品がモバイルだけで完結せずに、リアルなプロジェクトやプロモーションと連動していた。その2点が今年の大きな特徴と言えよう。今や日常的なインターネットへの入口はPCではなくモバイルデバイスとなっている。そうした環境の中で、モバイル広告の“広告”という意味も大きく変化しようとしている。何が広告で何が広告ではないのか?従来の価値基準や表現方法ではもはやこの分野を正確に捉えることはできないだろう。そういった意味でも今回受賞した作品の多くは、これからのモバイル広告の在り方を示唆するものであった。来年以降のこの分野における急速な進化と深化を予想させる今回の審査会だった。

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