第11回(2012年)審査員の講評(委員長以下、五十音順/敬称略)

、インタラクション性、ユーザー利便性がさらに充実しつつあり、思わずそこにコミットしてしまう魅力が感じられる。

嶋口 充輝
モバイル広告大賞 選考委員会委員長
慶應義塾大学 名誉教授
日本マーケティング協会理事長

これまでの様々な手法を複合的に取り入れながら、独特の世界観をつくっている作品がいくつか見られた。その点で、全体的に作品のレベルが高まっている印象。ゲーム性、インタラクション性、ユーザー利便性がさらに充実しつつあり、思わずそこにコミットしてしまう魅力が感じられる。
ただ、面白さやユニーク性の追求にはしり、適切なターゲティングと統合的仕組みの連動といったマーケティングの基本原則を外さないよう期待したい。

今年はクリエーティブ部門も、マーケティング部門も、スマートフォンが完全に中心になったという印象をうけた。

秋山具義
デイリーフレッシュ株式会社
アートディレクター

今年はクリエーティブ部門も、マーケティング部門も、スマートフォンが完全に中心になったという印象をうけた。クリエーティブ部門のパナソニックは、ビジュアルのクオリティが高く、内容的にも楽しい作品であった。マーケティング部門は、GPSをうまく利用した作品におもしろいものがあり、特に『MINI COUPÉハンティング大作戦』は、ゲーム性とスマートフォンを操作するだけで本物の車がもらえるというスケール感が良かった。

「広告」というコトバの新しい定義がこのモバイルワールドのなかでおこなわれている。

伊藤直樹
PARTY Creative Director / CCO / Founder"

企業の情熱も知恵も予算も注目も手の平の小さなアイコンに集まっている。しかしひとつ思いました。「いいね!」や「つぶやき」や「チェックイン」。いま強いSNSの行動習慣を利用したものが多すぎる気がしました。その点タクシー配車アプリやミニクーペの鬼ごっこは新しい行動様式を開発したすばらしいマーケティングソリューションだと思います。ふだんの生活のど真ん中をイノベーションした新しいカタチの広告が強いのだと思います。
「広告」というコトバの新しい定義がこのモバイルワールドのなかでおこなわれている。置いていかれないように、変化の現在地を常に見ていたいと思います。

技術やアイデアの秀逸さに加えて、ビジネス面への貢献が問われる「仕組み化」のステージに

小野 譲司
青山学院大学 経営学部 教授

ブランドの認知を高め、クーポン配布などの販促効果をねらうといったマーケティング企画からの進化がうかがわれた。一つは、企業がターゲットとする標的顧客の生活導線にリアルタイムで、しかも商品・サービスの特色を生かした形で入り込む企画。もう一つは、ブランドは知っていながらも、なかなか購入プロセスにまで踏み込めなかった顧客に対し、ソーシャルメディアの力をフックにしながら、顧客に参加させることを通し、ゲーム感覚の楽しさを創り出すことで、ブランドと顧客の心理的距離を縮めている企画である。取引業者や同業者を巻き込んだ仕組みを目指した新しい展開も生まれ、ますます展開が楽しみである。

スマートフォンが高齢者にまで浸透すると、モバイル・マーケティングの可能性はさらに高まるはずである。

恩藏 直人
早稲田大学 商学学術院長
兼 商学部長 教授

スマートフォンの普及によって、モバイル・マーケティングの進化を感じることができた。サントリーやBMWなどの企画は、モバイルならではの特徴をうまく利用していると思う。企画にインパクトを持たせたり、ブランド構築に貢献している。現時点では、若い世代を対象とした企画になっているが、スマートフォンが高齢者にまで浸透すると、モバイル・マーケティングの可能性はさらに高まるはずである。

顧客と店舗とメーカーがつながるシステムをゼロから立ち上げた試みについては、大きな将来性を感じた。

杉山 知之
デジタルハリウッド大学 学長/工学博士

モバイル広告にスマートフォンが本格的に活用されるようになってきたことをヒシヒシと感じた。
スマホが持つGPSを利用してリアルとの連動を試みる広告が多かったが、ますます企画段階に、現状で利用できる先端技術に詳しい人材の確保が必要になって来ていると感じた。
単純に一時期のキャンペーンに終わらず顧客と店舗とメーカーがつながるシステムをゼロから立ち上げた試みについては、大きな将来性を感じた。
全体としては、広告という概念がデジタル化で本当に変わっていくという確信が持てた審査だった。

ファンをつくり、共感を得るという企業のマーケティング目標に、もはやモバイルは欠かせない存在になっている。

田中 里沙
株式会社宣伝会議 取締役編集室長

モバイルはもはや身体の一部である。その距離感や特性を活かしながら生み出された秀逸な企画は、暮らしの応援や、利便性の向上も含んで日常をちょっと楽しく、面白くしてくれるものだった。短期的な成果や売上への貢献はとても重要だが、アプリやサービスを使いながら自然に取り込まれていく感じは、提供企業との関係をじわじわと深く長いものにする役割を果たす。ファンをつくり、共感を得るという企業のマーケティング目標に、もはやモバイルは欠かせない存在になっている。

マーケティングは社会の進化に合わせ、消費者の目線を大事に展開しなければならないことは、新しいメディアでも古いメディアでも同じ。

夏野 剛
慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科
特別招聘教授

スマホやSNSといった新しいツールやメディアが生まれてくる中、さまざまなチャレンジは評価できる。非常に斬新で、今後のお手本になるような作品も数多く存在したが、一方で、テクノロジーや新しさを追い求め過ぎて、消費者のニーズやセンチメントからかけ離れているように見える作品もあった。マーケティングは社会の進化に合わせ、消費者の目線を大事に展開しなければならないことは、新しいメディアでも古いメディアでも同じ。今後一層ブラッシュアップされ、レベルが上がってくることを期待したい。

Do it with othersというコンセプトは今の時代に非常に重要な考え方だが、それは他者のサービスに単純に依存することとは違うと考える。

宮崎 光弘
株式会社アクシス 取締役
多摩美術大学情報デザイン学科 教授

本年度、ひとつの傾向として、ソーシャルメディアとの連動を前提にコミュニケーションを設計している作品が急増したことが挙げられる。それが「連動」なのか、「依存」なのかということを考えさせられる審査会となった。Do it with othersというコンセプトは今の時代に非常に重要な考え方だが、それは他者のサービスに単純に依存することとは違うと考える。来年度は強力なソーシャルメディアのパワーを取り入れながらも、より魅力的でオリジナリティーのある作品の増加を期待する。

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