第10回(2011年)審査員の講評(順不同、敬称略)

マーケティング部門審査員

クリエーティブ部門・アプリケーション部門審査員

モバイルはいまや社会、生活者、企業にとって不可欠のコミュニケーション手段に

嶋口 充輝
モバイル広告大賞選考委員会 委員長
慶應義塾大学 名誉教授、法政大学 教授

第10回目となったモバイル広告大賞は、一つの時代の区切りをつくったことになります。「10年ひと昔」という言葉が示すように、10年前の応募作品は質量共に、今と比べると格段の差がありましたが、大賞創設の思いや志は、いまや大きく花開いたという印象があります。今回のモバイル広告大賞の候補作品を審査して感じることは、オーソドックスなモバイル広告の基本を踏襲しつつも、さらに現代的な適応と革新を追及した作品が多かったことです。これは、モバイル広告が、社会・顧客ニーズへの対応、通信・モバイル技術の発展を通じて、いまや社会、生活者、企業にとって不可欠のコミュニケーション手段となっていることによるのでしょう。作品に地域や組織規模の差が無くなったこと、他のプロモーション媒体と連動しつつも、モバイル広告は現代マーケティング・コミュニケーションの主役になっていること、が印象的でした。一方、クリエーティブの充実がさらなる発展のために望まれると感じられました。

イノベーションとマーケティング面での進化が、相乗効果を発揮しながら高度化

恩藏 直人
早稲田大学 商学学術院長
兼 商学部長 教授

モバイル広告大賞は、今年で10年を迎えました。この節目の年に、モバイル・マーケティングにおいて新しい流れが主流になってきたことを感じました。それは、スマートフォンの活用です。GPS、AR(拡張現実)、ツイッターなどの利用面で優れたスマートフォンは、従来の携帯電話に代わる次世代コミュニケーションを可能にしています。新しい端末が普及してきたことにより、革新的なキャンペーンやマーケティング・モデルが登場しました。今回の審査でグランプリに輝いた「九州新幹線カウントダウンプロジェクト『今日の西郷どーん』」、マーケティング部門で優秀賞となったアディダス・ジャパンのユーザ参加型「BE Originals campaign」、アプリケーション部門で優秀賞となった「Domino’s App」は、いずれもスマートフォンの特性を駆使した企画だと思います。イノベーションとマーケティングは、ビジネスが成長する上での2本柱として位置づけられていますが、モバイル・マーケティングでは、まさに端末におけるイノベーションとマーケティング面での進化が、相乗効果を発揮しながら高度化している様子が感じられます。

モバイルは、私たちの目となり耳となり…、日常生活を担う存在として機能している

田中 里沙
株式会社宣伝会議 取締役編集室長

第10回目を迎えた今回は、スマートフォンの特性を最大限に活かす企画が目立ちましたが、技術ありきではなく、利用者が楽しく自然に参加できる仕組みになっている点が秀逸でした。モバイルは、私たちの目となり耳となり、健康管理から記憶、絆という領域にまで入り込み、日常生活を担う存在として機能しています。これを反映するかたちで、技術を使うぞ、メディアになるぞ、と力むことなく、生活者の共感や喜びを満たすためにマーケティングコミュニケーションの中でモバイルを取り込む企画が実施されてきたことに歴史と進化を感じています。JR九州は地域が盛り上がり、わくわくするような企画でしたし、ドミノ・ピザは宅配の概念を変えました。マーケター、クリエイターの柔軟な姿勢とクリエイティビティは、この先ますますモバイルに注がれると思います。

技術やアイデアの秀逸さに加えて、ビジネス面への貢献が問われる「仕組み化」のステージに

小野 譲司
青山学院大学 経営学部 教授

「モバイル」を用いた広告やマーケティングのあり方を、少し長い目で俯瞰したとき、次の点が印象的です。
一つは、次々に台頭する新しい技術が、ごく一部のかぎられたユーザだけではなく、ごく普通の一般ユーザが無理なく使え、自らも参加し、発信する手段となっている点、まさに「民主化」です。スマートフォン、ソーシャルメディア、GPS、AR(拡張現実)などが特に印象的でしたが、グランプリを受賞された「九州新幹線カウントダウンプロジェクト『今日の西郷どーん』はそれらをたくみに活用した作品でした。
もう一つは、モバイルを通したマーケティングにも収益貢献が問われ始めている点です。出稿したバナー広告にクリックがどれくらいあったか、資料請求者や来店者数がどれくらい増えたかといった管理指標のレベルだけではありません。アプリケーション部門「Domino's App」は、もはや販促の域を超えて、業務の仕組みのレベルで評価すべき作品でした。技術やアイデアの秀逸さに加えて、ビジネス面への貢献が問われる「仕組み化」のステージに入っていることを象徴しています。
もはや「モバイル広告大賞」の「広告」という言葉の意味すらもかなり拡大解釈したほうが良さそうです。受賞「作品」という呼び方も適当でないかもしれません。その意味で、今後、どのように「モバイル」を駆使した取り組みになっているのか注目したいです。

技術をつかうことが目的ではなく、マーケティング効果を最大化するためのツールである

夏野 剛
慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科
特別招聘教授

各候補ともさまざまな工夫をこらしており、全体としては高い評価をしたいです。しかし、AR(拡張現実)などの新しい技術をつかうこと自身が目的ではなく、マーケティング効果を最大化するためのツールが技術なので、本末転倒にならないよう気を付けて欲しいです。フィーチャーフォンとスマートフォンの違いにこだわらず両面展開している作品のコンテンツクオリティーが高いのは皮肉とも言えますが、ユーザの数、マーケティング効果を考えると必然であると言えるのかもしれません。来年はもっと楽しみです。

スマートフォンの新しい使い方は今後も進化

秋山 具義
デイリーフレッシュ株式会社
アートディレクター

クリエーティブ部門は正直ここ数年間止まっている印象を受けました。ビジュアルもそうですが、コピーももっと頑張って欲しいと思います。JAVA TEA PARTYの引き算のシンプルなクリエーティブはいいと思いました。アプリケーション部門の優秀賞を受賞した「Domino's App」は、スマートフォンでのメニューの見せ方や、通信をうまく使ったオーダーシステムで実際の売り上げにつながっている点が良かったです。「小雪流ハイボールの達人」は、グラフィックがきれいで、音もクリアでシズル感がうまく出ていました。スマートフォンの新しい使い方は今後も進化していきそうだと感じました。

ユーザが能動的に楽しめるアプリケーションによるプロモーションは大きな期待を感じる

杉山 知之
デジタルハリウッド大学 学長/工学博士

バナー広告については、限られた環境の中での表現が、とりあえず行き着いた感があり、デザイン・アイデア共傑作したものがありませんでした。スマートフォンなどの広告は、まだ歴史が浅いこともあるのか、凡庸な表現に終わっていました。表現力に余裕があるハードが出現してきたのだから今後が期待されるところです。アプリによるプロモーションには大きな可能性を感じることができました。スマートフォンなどの多様な機能を取り込むことにより、ユーザが能動的に楽しくプロモーションに乗ってこれることが素晴らしいと感じました。

制約の中から生まれる魅力的なクリエーティブに期待

宮崎 光弘
株式会社アクシス 取締役
多摩美術大学情報デザイン学科 教授

クリエーティブ部門においては制約がある中でのクリエーティブを制作することは大変難しいことではありますが、制約の中から生まれる魅力的なクリエーティブが来年度は数多く応募されることを期待したいです。アプリケーション部門ではスマートフォン元年とも言える今年、iPhoneやアンドロイドなどの特性を活かした作品が数多く登場していました。その中でもGPS機能やセンサーを有効に活用したアプリケーションが高い評価となりました。また「日産リーフ」のように、プロダクトをリモートコントロールする体験を、製品のプロモーションにつなげるという方法は、今までになかったアプローチで今後の展開が期待できます。

逆手前提のクリエーティブ、企業とユーザをつなぐプラットフォームとしてのアプリケーション

伊藤直樹
クリエイティブディレクター

「小さい」「見にくい」「あまり動かない」「荒い」など、表現制作上の制約を思い切り逆手にとってつくらないと、なかなか面白くならないですよね。逆手前提で、なんとかクリエーティビティーを発揮して頂きたいと思います。期待しております。アプリケーションは企業とユーザをつなぐプラットフォームの方向にどんどん向かっています。いままで世の中になかった利便性や快適性を新たに提供し、世の中をよくするデザインで仕上げたとき、素晴らしいものが出来上がるのだと思います。今回の上位作品はどれも志の高いデザインの完成度も悪くない素晴らしいものだったと思います。

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