コードアワード 2017 審査員講評

「コードアワード2017」審査員長

伊藤 直樹 / Naoki Ito

PARTY
クリエイティブディレクター

イノベーションとは何か。クラフトとは何か。各部門のクライテリアをひとつひとつ細かく定義していきながら、各賞を決めていきました。今年からエントリーが有料になったにもかかわらず、過去最高のエントリー数となりました。各部門のベストとグッドはどれもレベルが高く、今年はかなりの粒ぞろいと言っても良いと思います。そのなかでも『GLICODE』と『聞き間違えない国語辞典』がグランプリ候補に残りました。『GLICODE』は各部門では当初ベストに選出されていませんでしたが、イノベーション、クラフト、イフェクティブ、キャンペーン、ユース・オブ・メディアのどの部門でも点数が高く、総合力でグランプリに選ばれました。“ 逆転優勝 ”といっても過言ではありません。IoT、AR、人工知能、データサイエンス、スマホ決済など、世の中のデジタル・トピックについて、どの受賞作品も素晴らしい答えを提示していると思います。

キリーロバ・ナージャ / Nadya Kirillova

株式会社電通
電通総研Bチーム
クリエーティブ / コピーライター

受賞されたみなさま、本当におめでとうございます!今年一番印象に残っているのは、「デジタル・エクスペリエンス」とは何か?その定義は何か?といったコードアワードの核となる部分について深く議論を重ねたことです。「イノベーション」は、スケールやテクノロジーで人を驚かすことから、どう人々の生活に入り込んで、変えていくかという視点に。「クラフト」は、技術面における高度な作り込みから、もっと広範囲な「手仕事」に着目。「イフェクティブ」はただ「バズッた」に留まらず、その結果世の中にどんな新しい「行動」を提供できたか。「キャンペーン」は、今までにない発想でどのように人々を驚かせたか。「ユース・オブ・メディア」は、今までにないところにアイディアを忍ばせることでどう課題解決につなげていったか。受賞された作品は今年の「CODE(Creativity Of Digital Experience)」のショーケースになっています。

齋藤 精一 / Seiichi Saito

Rhizomatiks
Creative Director / Technical Director

デジタル広告は何なのか?
そもそも広告は今の時代に何をすべきなのか?
テクノロジーが当たり前になった今だからこそ、それをどう加速できるのか?
そんな疑問をこの2年ずっと考えていた私にとって今回の審査は非常に刺激になるとともに、審査員のみなさんと審査を通じて深く議論をしました。

今までの全投下型の広告から、デジタルツールによって離散した構造になった今、コミュニケーションは大きく変わっています。
だからこそ、広告が教育やまちづくり等の機能を持つことができるし、それを創るクリエイティブに関わる人も変わる必要があります。
テクノロジーはあくまでも道具になり、今までの人間ならではのコミュニケーションと同等に扱いうまくトンチを効かせて混ぜていく必要があります。どちらに頼りすぎても時代遅れになってしまい、多くの人には届かなくなってしまいます。
これは答えの無い旅ですが、それも含めて楽しみながら大きな広告クリエイティブのうねりを俯瞰しながらものを作る時代になりました。大いにこの時代に創ることを楽しみたいものです。

佐藤 カズー / Kazoo Sato

TBWA\HAKUHODO
チーフ クリエイティブ オフィサー

イノベーションとは何か?が問われた審査でした。瞬間風速的にしか存在しないプロダクトやサービスはイノベーションではない。もはや時代にあっていないのでしょう。アイデアがどうスケールしていくのか?それによって世の中にどういった行動変化、態度変容が起こるのか。そこまで見えてこそイノベーションであると。面白い時代になってきました。

田川 欣哉 / Kinya Tagawa

Takram 代表 / デザインエンジニア

私が日々手がけているのは、クライアントと一緒にプロダクトやサービスを作っていくような仕事です。そんな私が広告賞の審査をやることになっていること自体が、時代の流れを表しているように思います。つまり「プロダクトやサービスを作ること」と「それを知ってもらうこと」との垣根が融解している。それが現在なのだと思います。各部門の入賞作品を見ていると、この流れを上手く掴んでいる人たちが良い仕事をしているように思います。5時間におよぶ最終審査では、審査基準・クライテリアの明確化に多くの時間を費やしました。今何をどのような基準で評価すべきか。価値とは何か。選ばれた作品群を眺めてみると、その輪郭がうっすらと見えてきます。しかし、その輪郭は日々姿を変えるはず。そして、輪郭の中心にどっかり構える不動の価値も存在しています。通奏低音と踊るメロディーコード。そう、時代のCODEを聴き分けるセンサーが僕らをガイドするのです。

田中 里沙 / Risa Tanaka

事業構想大学院大学学長 / 宣伝会議取締役メディア 情報統括

コードアワードは、年々進化をしている。応募者も審査員も、だ。
デジタルがもたらす最高の体験を、多様な尺度で測ろうとする試みは、未来への挑戦でもある。参加企業の取組は、目標に対する成果に留まらず、広告コミュニケーションの枠を超えて、切り口、表現、価値提案を含むアイデアに新しさと実行力があるかどうか。とても”欲張り”な賞だ。各社の企画は新鮮で、入賞作にはそれぞれに光る個性や魅力があったが、審査会では社会への影響度、生み出した副産物、将来への布石などを想像し、見極める場面が続いた。幅広いフィールドで活躍する審査員の方たちは、論評だけでなく、自らも最前線で闘うプレイヤーでもある。その中から選出された受賞作は世の中を確実に変える、素晴らしい企画であると同時に、さらなる進歩が期待される。コードアワードはその舞台となり、各社や制作者の方々が互いに刺激を受けあう機会になっていると確信した。

築地 Roy 良 / Roy Ryo Tsukiji

株式会社BIRDMAN 代表 / クリエイティブディレクター

受賞者のみなさま、おめでとうございます!去年に引き続き審査員を務めさせていただきましたが、去年と大きく違うのは、今年はグランプリに値する作品が数多くあったことだと思います。それによりかなり白熱した議論が繰り広げられました。特にグランプリを獲った『GLICODE』とベスト・イノベーションを獲った『聞き間違えない国語辞典』は現代の社会課題に対する一つのソリューションとして高く評価されました。コードアワードはデジタルエクスペリエンスを賞するアワードなので、今年の受賞作品はそれぞれがまさにそのデジタルエクスペリエンスを具現化した作品だったと思います。そして去年と比べ海外からの応募も増えたことが印象的でした。その中からも受賞作品が出たことで少しずつコードアワードが国際化していっている実感があります。それらも踏まえ、このコードアワードが日本のデジタルクリエイティブの底上げになっていって欲しいと強く願います。今回もこのような機会をいただきましてありがとうございました。

本間 充 / Mitsuru Homma

アビームコンサルティング株式会社
デジタルトランスフォーメーションビジネスユニット
デジタルマーケティングセクター ディレクター

コードアワードの審査に初めて参加させていただきました。審査会では、この広告賞のユニークさを再確認し、多くの作品についての議論を行いながら、世の中のシフトを感じることが出来ました。最新のAIを使っていながら、技術自慢ではない広告。AR/VRをあまり感じさせない、広告。そして、非常に複雑な映像技術を使っているが、見るものにはストレスを感じさせない広告。今年の作品の多くが、技術を全面に押し出した広告ではなく、技術を使ったコミュニケーションが主となるものになっていました。さらに、狭義の広告の枠を超えた、サービスやユーティリティーに近い存在のものもありました。広告賞の境界線も変わり始めています。今年のコードアワードは、技術だけではなく、マーケティング・コミュニケーションを審査できたアワードとなりました。

(審査員長以下、五十音順)